カノムチャンバイトゥーイ(ขนมชั้นใบเตย)

「カノムチャン」は縁起を担いで9層にしよう!

「カノム」はタイ語で「お菓子」、「チャン」は「層、階段」を意味します。タイ料理はお菓子であっても見た目や使われている食材、調理法がそのまま名前になっていることが多くて助かります。

今回のカノムチャンは9層になっていますが、 タイでは「9」は「ガーオ」と言い、発音の似た単語「ガオナー(前進・進展)」を連想させ、縁起の良い数字だとされているんですって。ということでの9層です。

名前の後半の「バイトゥーイ」は「パンダンの葉」。 この葉っぱ、スリランカ料理でも「ランぺ」という名でしばしば登場するのですが、東南アジア諸国ではこの葉の持つ甘く芳醇な香りが重宝され、お料理の香り付けとして用いられているようです。タイ料理に関して言うと、香りだけではなくこの葉の持つ美しい緑色をお菓子作りの際に生かします。

まずはパンダンリーフの色と香りをエキスにしましょ。

「パンダンリーフ」って簡単に言うものの、普通は見ないですよね、こんな葉っぱ。私もタイ食材店以外で売っているのを見たことがありません。見た目通りこの葉は繊維質でバリバリしていてなかなか切りにくいです。

これをミキサーにかけて細かく…したかったのに、一筋縄ではいかなかった(涙)。これさ、バイタミックスとかだったらもっとスムーズにいくんでしょうか

もう思わず買いたくなりましたよ。でもその衝動をぐっと抑え、ふたを開けてはスプーンでつつき、かき混ぜを繰り返すこと十数分。

何とか必要量のパンダンリーフ液の抽出に成功しました。そう。水をたくさん入れればもちろんミキサーはスムーズに回るのです。がしかし。濃い緑色にするために、水を余分に加えるわけにはいかなかったのです。いやー苦労した。

粉を練りに練って、ココナッツミルクで溶くという驚愕の工程!

カノムチャンづくりに使うのは上から米粉、タピオカ粉、くず粉の三種類。これを適宜ブレンドしまして、水を加えて練ります。手でこねる場合は手のひらの付け根に力をかけ、そこで生地を前に押し出すようにギュッギュとこねていきます。その時間、最低でも15分。ですが、以前ベーグルづくりにはまって腱鞘炎になった過去をもつ私は、その際に「キッチンエイド」という救世主を我が家に迎えました。

もう15年以上使っていますが、いまだに元気です。ありがたい。

ということでキッチンエイドでこね始めたのですが、これがまたパン生地のようにうまくいかず。羽の種類を変えたり、スピードを加減したりしながら、なんとか納得の状態までもっていきました。

そして。せっかく時間をかけてこねた生地をなんと!ココナッツミルクで溶いてしまうのです。ああ無常。。。でもね、この「捏ね」の作業を入れないと、もっちりとした食感にはならないんですって。理系に強い方に、科学的な説明をお願いしたい。

こうしてできた生地の重さをはかり、「5:4」に分けます。

上から「緑・白・緑・白…」の9層カノムチャンにするため、「5」の方にバイトゥーイ液を加えます。最後はいよいよ「蒸し」の作業です!

「緑」3分「白」3分「緑」3分…(の地味な)繰り返しが生み出す美しき9層

蒸し器にたっぷりの水を加えて沸騰させます。型もあらかじめ入れて熱々にしておきます。そこに「緑」を加えて、

蓋をして3分加熱。

お次は「白」を加え、また蓋をして3分、この作業を9回繰り返すわけです。さすればこの通り。

後は冷ましてから取り出して切るだけ。カノムチャンバイトゥーイの完成です!

タイ式ういろう「カノムチャン」。お行儀が悪いですが、1層ずつ剥がして食べるのが好きです。

ココナッツミルクは油分を含んでいるため、このように難なく型から取り出すことができます。

見てください、この美しい断面!頑張った甲斐があったわー。そしてこのカノムチャン、もちろん菓子切りで上から下まで9層一気にいっちゃっても良いのですが…

個人的にはこうして一層ずつ剥がして食べるのが好きです。結果、菓子切りは添えただけで一切使用しておりません。

ココナッツミルク風味なので、もちろん日本のういろうとは違いますが、その食感は非常によく似ています。時々無性に食べたくなる、できれば買って食べたいタイ式ういろう「カノムチャン」でした。